2018年度の滋賀県の国語の公立高校過去問を解説
2018年度の全23問のうち、前年度と比べ記号問題が2問から6問へと大きく増えました。とはいえ、依然として記述問題は多く、記述力を鍛えておくことが重要になる点は前年度と変わりません。
平均点が58.6点で、前年度と比べてプラス6.3点と、易化しました。
滋賀県の国語は記述の問題が非常に多く、読解問題は少し癖が強めですが、対策をすれば高得点を期待できます。
詳しくは滋賀県公立高校国語過去問の傾向をまとめた記事がありますのでそちらもご覧ください。
問題文は京都新聞様のサイトよりダウンロードできます。
https://www.kyoto-np.co.jp/list/corporate/high_school_exam
各問の正答率などのデータは滋賀県教育委員会様より閲覧できます。
https://www.pref.shiga.lg.jp/edu/nyuushi/high/senbatsu/105597.html
大問1 ミツバチの行動についての読解問題
「本の一部」を読み進めつつ、問題の内容によっては「図鑑の一部」も読んで解答すればよいです。
問1【本の一部】の【図】の(a)と(b)に当てはまる言葉の組み合わせとして最も適切なものを、次のアからエまでの中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア (a)戻り走行 (b)尻振り走行
イ (a)戻り走行(b)尻振りダンス
ウ (a)尻振りダンス(b)戻り走行
エ (a)尻振り走行(b)戻り走行
解説 第一段落の内容より、尻振り走行でと戻り走行であることを読み取って、図の(a)と(b)にそれぞれ正しく当てはめるだけです。
答 エ
問2 【本の一部】の傍線部について、ミツバチがこの行動をするのはどのようなときですか。【図鑑の一部】の言葉を使って三十五字以内で書きなさい。
解説 傍線部の「特徴的な行動」とは、本の一部の傍線部の直前の内容より、有望な餌場で採餌を終えた働き蜂が自分の巣へ戻った時に巣板の上で行う行動のことを指します。これと同じ場面を示す文章を、「図鑑の一部」から読み取ります。「図鑑の一部」冒頭の内容が合致します。
答 花の蜜が豊富にある場所を発見し、巣に戻って仲間を招集するとき。
問3【本の一部】の傍線部について、これはどのような研究のことですか。三十字以内で書きなさい。
解説 波線部は、直前の第3段落に書かれている玉川大の佐々木正己先生の研究を指します。「餌場までの距離と尻振り走行時間の関係を調べる」とまとまって書いてある部分があり、この文章=波線部で繋げそうですが、これだけではどこから餌場までなのか分からないので、同段落2行目より、「巣から」と自分で付け足す必要があります。
大問1の中ではこの問3が最も正答率が低いです。「巣から」の部分を付け足せずに満点がもらえなかった受験生が多かったのではないでしょうか。
答 巣から餌場までの距離と尻振り走行時間の関係を調べる研究。
問4 【本の一部】に書かれている事柄について、【図鑑の一部】を読むことでより理解が深まることとして最も適切なものを、次のアからエまでの中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 巣から餌場までの方向は尻振り走行の中にどのように表現されているのか。
イ 生息する地域のちがいが8の字ダンスにどのような影響を与えているのか。
ウ ダンス蜂はなぜ尻振りダンスの戻り走行を右、左と交互に繰り返すのか。
エ 尻振り走行のちがいが遺伝的なものであるといえる理由は何なのか。
解説「本の一部」には巣から餌場までの距離について詳しく書かれていますが、「図鑑の一部」には、距離に加え方向についても説明されていて、さらに図で解説がされています。よって、アを選びます。
答 ア
問5 【図鑑の一部】に二十傍線部「情報を得たハチ」とありますが、【本の一部】では、ミツバチは巣の中で、どのように距離についての情報を得ていると説明されていますか。具体的に書きなさい。
解説「本の一部」の第5段落と第6段落を読み、採餌蜂とダンス追従蜂がそれぞれ何をしてどう関係しているのかを要約してください。また問題文には、「どのように距離についての情報を得ていると説明されていますか。」と聞かれているので、〜によって、距離についての情報を得ている」という書き方で締めましょう。
記述問題を書く際は、本文を切り取って書くことも大事ですが、文字数制限を考慮しながらできるだけ詳しく書くことが必要です。
大問1では記号問題を含め、答えとなる部分を本文の2箇所以上から読み取らなければならない問題が多かったので、複数の文章を読み取る読解力とそれを繋げる要約力が試されているといえます。
大問2も二つの文章から読み取る読解問題
問1 あかねさんは、【本の一部】の傍線部に注目し、疑問に思ったことを【読書の記録】に書きました。「文字を覚えるときもそう」とありますが、ここではどのようなことを示すために「文字を覚える」ときのことを挙げているのですか。次のアからエまでのうち、最も適切なものを一つ選び、記号で答えなさい。
ア 文字を覚えるためには読みながら書く練習を繰り返すことが必要であり、そうすれば覚える速度が速くなるということ。
イ 文字を読んだり書いたりすることの一方だけでなく、両方をすることでより効果的に文字を覚えることができると言うこと。
ウ 文字を新しく覚えるためには、まず声に出して読むことができなければ書くことができるようにならないと言うこと。
エ 文字を覚える事は難しいので、書く力を身に付けてから読む力を身に付けるという学習の順序が大切になるということ。
解説 傍線部後半の「読むことは書くことと循環して、はじめて力を発揮できるのです。」の部分と同じ意味を持つものを選んでください。読むことと書くことが互いに影響を受け合っている対等な関係になっているということを「循環して」と表現しているので、読むことと書くことの両者が対等な立場に置かれているイが解答になります。
答 イ
問2 【読書の記録】のaにあてはまる適切なものを、【本の一部】の文章中から四十字以内で抜き出し、そのはじめと終わりの5時ずつを書きなさい。
解説 「読書の記録」にまとめられたa以外の2つの内容が「本の一部」の第2〜第4段落に書いてあるので、この辺りから2つと同じような表現を探します。
解答は第3段落の最後の文章です。「読書の記録」にまとめられた順番と「本の一部」の順番が違っているので、少し惑わされるかもしれません。
答 筆者が何を〜考えてみる
問3 第4段落について説明した文として最も適切なものを、次のアからエまでの中から1つ選び、記号で答えなさい。
ア 第3段落で述べた意見の理解が深まるよう、立場を変えることの重要性を別の角度から説明している。
イ 第3段落で述べたことと対比させ、違いが明確になるよう、交渉の技術という新たな視点を示している。
ウ 第3段落までに述べたことのまとめになるよう、立場を変えることの重要性について意見を述べている。
エ 第3段落で提起した問題を解決できるよう、交渉の技術と言う視点を踏まえて、答えを導き出している。
解説 第3段落の内容を踏まえた上で、第4段落では何が書かれているかを考えます。
第3段落では本を読む際に筆者の立場になって考えることが大切だと述べられていて、第4段落では交渉の際に相手の立場に立って考える力が必要だと述べられています。
第3段落では筆者と読者、第4段落では交渉の場面という第3段落とは別の角度から説明されているので、アを選びます。
答 ア
問4 あかねさんは、【本の一部】の波線部に注目して疑問に思ったことを【読書の記録】に書き、「説明的な文章」を読むときと小説や戯曲を読むときの違いについて、□のようにまとめました。次の□の中のb内にあてはまる適切な言葉を四十五字以内で書きなさい。
「説明的な文章を読むときには、小説、戯曲を読む時と違ってb。」
解説 第6段落の内容を書きます。波線部の直後の、「この仕組みがわかりにくい点」の「この仕組み」がどのような仕組みなのかを書ければ、後は第6段落の2行をまとめるだけです。
第4段落1行目「相手の立場に立って考えられる」
第5段落1行目「語り手や登場人物の立場に立ってみる」
とあるように、「この仕組み」とは筆者や役者や演出家など、自分以外の立場に立って考える仕組みのことです。第4段落1行目の「相手の立場に立って」という表現をそのまま使っても一見良さそうですが、小説や戯曲での相手とは誰を指しているのかが分かりにくいので、好ましくありません。「この」という指示語があると抜き書きしたくなるところですが、この問題では立ち止まって考える必要がありました。まさに読解力が問われている問題といえます。
この問題は正答率が8.8%と最も低いですが、一言一句の表現が難しいというよりは、「自分以外の」という書き方が出来ずに部分点になる受験生が多かったのではないでしょうか。
答 自分以外の立場に立つ仕組みがわかりにくいので、意識的に書き手の立場に立って読む必要がある
問5 【本の一部】を読んで、「読む力を伸ばす」という事についてあなたが感じたり考えたりしたことを、【読書の記録】の【感想】に書くとしたらどのように書きますか。次の条件1と条件2にしたがって書きなさい。
条件1 【本の一部】から言葉や表現を引用して書くこと。
条件2 原稿用紙の正しい使い方にしたがい、百字以上、百四十字以内で書くこと。
解説 毎年恒例の140字以内の記述問題です。
前年度は「あなたが考えたことを」書く問題でしたが、問題文にあるように本年度は感想を述べれば良いので、自由度が高すぎた前年度と比べるとかなり易化しました。
内容としては、筆者が重点的に述べている読む力の重要性や対話で相手の立場に立つこと、創作物で作り手の立場に立つことの大切さなどに触れた上で、ポジティブな表現で感想を述べましょう。
例:「私の中では新しい考え方だ。」「今後意識して取り組みたいと思う。」など
大問3は漢字の読み書きや簡単な古典の問題
問1 次の①から⑤までの文中の傍線部のカタカナを漢字に直して書きなさい。
①魚をヤいて食べる。
②衣類を箱にシュウノウする。
③昨日ユウビン物が届いた。
④空が赤くソまる。
⑤ウチュウ飛行士になる。
答 ①焼 ②収納 ③郵便 ④染 ⑤宇宙
問2 次の①から⑤までの文中の傍線部の漢字の正しい読みをひらがなで書きなさい。
①出席者に賛否を問う。
②ひもを束ねる。
③要求を退ける。
④畑を耕す。
⑤弟の書いた作文を添削する。
答 ①さんぴ ②たば ③しりぞ ④たがや ⑤てんさく
問3次は「花」という漢字を行書で書いたものです。楷書と比較したとき、◌で囲まれた部分にはどのような特徴がありますか。最も適切なものを、後のアからエまでの中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 筆順の変化と画数の増加
イ 筆順の変化と点画の連続
ウ 点画の連続と点画の省略
エ 点画の省略と画数の増加
答 イ
問4 次の【古典の作品】を読んで、後の①と②の各問いに答えなさい。
【古典の作品】
思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを
①【古典の作品】の傍線部「思ひつつ」を現代仮名遣いに直し、全てひらがなで書きなさい。
②【古典の作品】の種類として最も適切なものを次のアからエまでの中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 俳句 イ 漢詩 ウ 和歌 エ 随筆
答 ウ
問3の漢字と古典の問題は毎年のことですが教科書レベルなので、定期テストをしっかり取り組めていれば満点が取れる問題です。
まとめ
以上が2018年度の滋賀県公立高校過去問国語の解説でした。
本年度は大問1の全体的な易化、大問2の問4の部分点の取りやすさ、問5の140字の記述の易化や記号問題の増加により、前年度と比べ難易度はやや落ちました。
ですが、大問1、大問2共に複数の箇所を読み取ることで満点をもらえる記述問題が多く、そのいずれも読解力と要約力が試される問題ばかりです。膳所高校や彦根東高校、守山高校、石山高校などの上位校を目指す人はここで満点が取れれば、ライバルと大きく差をつけることができます。