2021年度の滋賀県の国語の公立高校過去問を解説
前年度と比べ平均点はプラス12.7点で60.4点と、大きく易化しました。前年度が難しすぎた印象で、易化に伴って問題の傾向も変わっています。
滋賀県の国語は記述の問題が非常に多く、読解問題は少し癖が強めですが、対策をすれば高得点を期待できます。詳しくは滋賀県公立高校国語過去問の傾向をまとめた記事がありますのでそちらもご覧ください。
問題は京都新聞様のサイトよりダウンロードできます。
https://www.kyoto-np.co.jp/list/corporate/high_school_exam
各問の正答率などのデータは滋賀県教育委員会様より閲覧できます。
https://www.pref.shiga.lg.jp/edu/nyuushi/high/senbatsu/105597.html
大問1 【本の一部】【資料】を読み取る読解問題
問1 【本の一部】の傍線部①について、どのようなことですか。書きなさい。
解説 傍線部「見えない文字」とは傍線部直前の内容「一番大事なのは〜読むことです。」、つまり書き手が言葉として表現しなかった内容、もしくは表現できなかった内容を指します。
多くの人はこの傍線部直前を要約したと思いますが、ここだけでは説明不足であり、何故読み手は表現しなかったのかを述べる必要があります。
第6段落「『書く』は、自分のおもいを遥かに超える行為です。」この部分より、「書く」ことでは言葉として表現できないおもいが表れてしまうことを読み取ります。
一見、第6段落は傍線部から離れているので読み取りにくいですが、読解公式に当てはめれば、この読み取り自体は難しくありません。続いて要約できるかが肝心です。
正答率は19.3%と、前年に続き一番初めの問題としてはかなり低いです。最初=簡単と思い込まず、よく読み取り、不足がないか考えましょう。
以上より、傍線部直前と第六段落の内容を組み合わせて解答しましょう。
答 書き手が文字として書けなかった、あるいは書かなかった、言葉として表現できないおもいを読み取るということ。
問2 【本の一部】の傍線部②とは、どのような言葉ですか。【本の一部】の二重傍線部(ア)から(エ)までの中から一つ選び、記号で答えなさい。
解説 詩より
「声に出せば 文字に記せば たちまちにに色褪せるだろう」
「人に伝えようとすれば あまりに平凡すぎて けっして伝わってはゆかないだろう」
とあるように、普段から当たり前のように使っている言葉を選べば良いです。
詩の中で読み取れなくても、後ろの筆者の主張を順番に読んでいけば、(ア)(イ)(ウ)はそれぞれ否定や逆説の前にあるので違うと読み取れます。(エ)の「いつも聞いている言葉」が正解です。
答 (エ) いつも聞いている言葉
問3 【本の一部】の波線部について、ここには詩人のどのような思いが述べられていると考えられますか。【本の一部】と【資料】をふまえて最も適切なものを、次のアからエまでの中から1つ選び、記号で答えなさい。
ア 自分にとって大事な言葉は蝋燭のあかりのようにはいかないものだが、心の奥底で自分なりの意味を信じ続ければ、いつかは他人に理解してもらえるだろうという期待。
イ 自分の心を明るく照らす言葉を1つだけ探し出し、周囲に流されそうになった時にも、その言葉を心の中で信じ続け、自分のより所として守り抜こうとする覚悟。
ウ 自分にだけわかる意味を伴った特別な言葉を、安易に口に出すことなく、自分の人生を照らす「火」として、生きている限り心の中で大切にし続けようとする決意。
エ 自分を支えている言葉だとしても本当のおもいは他人には伝わらないので、他人から理解してもらおうとなどとは思わず、心の奥底で消し去るしかないというあきらめ。
解説
ア ×「蝋燭のあかりのようにはいかないものだが」「いつか他人に理解してもらえるだろうという期待」が波線部「一本の蝋燭のように 熾烈に燃えろ 燃えつきろ」「誰の眼にもふれずに」と合いません。
イ ×「心の中で信じ続け、自分のより所として守り抜こうとする覚悟」が波線部「自分勝手に 誰の眼にも触れずに」と合致しません。
イでは保守的なニュアンスですが、波線部では守るというより、心の中に芯として植えつけられているかのような表現です。見極めるのは少し難しいです。
ウ ◯ それぞれ当てはまっています。
エ ×「心の奥底で消し去るしかないというあきらめ」が波線部「熾烈に燃えろ 燃えつきろ」と合いません。
イ、ウと波線部を読み比べて、どちらの方がより表現に近いかを考えます。アとエは明らかに違う箇所があるので、絶対に選んではいけません。
答 ウ
問4【本の一部】の傍線部③について、【資料】ではどのように述べられていますか。【資料】の文章中から比喩で書かれているところを十五字で抜き出して書きなさい。
解説 【資料】を読むと、傍線部③「人生の同伴者となるような一語」と同じような表現は【資料】中に何度か出てきますが、比喩(〜のような)で表されているのは8行目の「自分にとってくさびのような存在」しかないので、ここを抜き出して書きましょう。
答 自分にとってくさびのような存在
問5 【本の一部】の傍線部④について、どのようなことですか。書きなさい。
傍線部④は「食堂にいるのにウィンドウの中にある蝋細工でできた食べものを見て喜んでいるのと同じ」とあります。傍線部④の直前を読むと、これは目だけで言葉を読むことに対してもったいないと主張していることの説明になっていることがわかります。
傍線部の内容を、言葉をよむことに置き換えてみると、
食堂=本物の食べものを味わえる場所=言葉の本当の意味を味わうことができる機会
ウィンドウの中にある蝋細工でできた食べものを見て=食べものの見た目だけを表されたものを見て=書かれた文字を目で読むだけで
喜んでいる=本物の料理を楽しんだ気になっている=意味を理解したと勘違いし、満足している
となります。以上のことをまとめます。
答 言葉の本当の意味を味わうことができる機会を与えられているのに、書かれた文字を目で追うだけで意味を理解したと勘違いし、満足しているということ。
このような筆者の主張が具体例の中にねじ込められている表現が問いになっているものは非常に難しいです。正答率は僅か2.5%しかありません。最早差がつくポイントというよりも、この問題が解ければ国語に関しては間違いなく上位校レベルの学力であると言っていいでしょう。
大問2 【本の一部】【ホワイトボード】【話し合いの様子】から読み取る読解問題
問1 【ホワイトボード】の(I)にあてはまる言葉を、【本の一部】の文章中から十一字で抜き出して書きなさい。
解説 【ホワイトボード】の「◾️違い」に書かれている内容は、【本の一部】第三段落をまとめたものです。
【本の一部】第三段落を読み進めていくと、
「前画面との連続動作であることが少なく、画面と画面の〈間〉に時間や場所の推移があるのがあたりまえ」とあり、【ホワイトボード】の内容に合わせて書きましょう。順番通り読み進めていけば、まず間違えることはない設問です。
答 時間や場所の推移がある
問2 【話し合いの様子】の二重棒全部について、「単独の〈絵〉」と「〈絵本の画面〉」はどのように違うのか、自分の言葉で説明しなさい。
解説 〈絵〉や〈絵本の画面〉といったワードは、【本の一部】第五段落以降に述べられています。
ABCの絵が具体的な例として用いられながら〈絵〉や〈絵本の画面〉について説明されているので、読み取りにくいです。
第五段落「これらがそれぞれ単独で示される時(A/B/C)」
第六段落「単独の〈絵〉が、連続して〈絵本の絵〉になり、言葉が明確なストーリーをもたらして〈絵本の画面〉となるわけです。」
第十段落「同じ絵を使っても、連続の順序によって内容が変わり得る」
以上を要約します。
第五段落が〈絵〉の内容、第六段落と第十段落は〈絵本の画面〉の内容です。
第六段落の内容に加え、ただ絵が連続していれば良いのではなく、「順序」によってストーリーが組み立てられているということを述べないといけないので第十段落の内容を加えなければなりません。
少し離れていて、読み取りにくいですが、ここを読み取れないと満点はもらえないでしょう。最低限第五、第六段落から読み取って部分点は取りたいところです。
答 単独の〈絵〉は、ある場面の様子が表現されているものであり、〈絵本の画面〉は、順序性をもった複数の絵と言葉によってストーリーになっているもの。
問3 【話し合いの様子】の空欄IIに当てはまる言葉を、次のアからエまでの中から1つ選び、記号で答えなさい。
ア 絵本は、作家が絵と言葉を思いつきで並べて作っていて、めくったときに読み手にストーリーの創造性を与えられるように工夫しているのだと思います。
イ 絵本は、作家が絵と言葉をよく考えて作り、めくっていくことで読み手にテーマが伝わるよう絵と絵のつながりに必然性をもたせているのだと思います。
ウ 絵本は、作家が絵と言葉を連続するように作っていて、めくりの間に読み手自身がストーリーの方向性を決定できるように仕組んでいるのだと思います。
エ 絵本は、作家が絵と言葉を複数の案の中から選んで作り、めくりながら読み手がつながりのあるストーリーを作る発展性をもたせているのだと思います。
解説 【本の一部】のまとめのような問題です。
しっかり読めていれば、難易度は低いです。
ア × 作家の思いつきでは作られていない。
イ ◯
ウ ×読み手がストーリーを決定できるように仕組むわけではない。
エ × 読み手がつながりのあるストーリーを作る発展性をもたせているわけではない。
答 イ
問4 あなたの中学校生活を絵か言葉で伝えるとしたら、絵と言葉のどちらを選びますか。どちらかを選び、次の条件1と条件2にしたがって書きなさい。
条件1 選んだ理由について、そのよさに触れながら書くこと。
条件2 原稿用紙の正しい使い方にしたがい、百字以上、百四十字以内で書くこと。
解説 どちらか選び、本文の内容から必ずしも読み取る必要はないので、本年度の百四十字以内の記述は、難易度が低めです。
条件に従いさえすれば満点も容易いでしょう。正答率は42.3%とこの設問にしてはかなり高めです。
大問3は漢字の読み書き、文法、古典の問題
次の1から4までの各問いに答えなさい。
問1 次の①から⑤までの文中の傍線部のカタカナを漢字に直して書きなさい。
① ベンロン大会で優勝する。
② 一定の湿度をタモつ。
③ タグいまれな才能の持ち主だ。
④ 毛糸で手袋をアむ。
⑤ 飛行機のモケイを作る。
答 ①弁論 ②保 ③類 ④編 ⑤模型
問2 次の①から⑤までの文中の傍線部の漢字の正しい読みをひらがなで書きなさい。
① 光沢のある素材を選ぶ。
②教室の床を拭く。
③ボールが弾む。
④お客様のご意見を承る。
⑤応援歌で選手を鼓舞する。
答 ①こうたく ②ふ ③はず ④うけたまわ ④こぶ
問3 次の文中の傍線部の「ない」と同じ用法のものを、次のアからエまでの中から1つ選び、記号で答えなさい。
遠すぎて見えない。
ア 映画の終わり方が切ない。
イ 今日は、あまり寒くない。
ウ どんなことがあっても笑わない。
エ 高い建物がない。
解説 「見えない」の「ない」は動詞「見える」の否定をしているので、同じく動詞を否定しているものを選びます。
ア × 形容詞「切ない」の一部
イ ×形容詞「寒い」の否定
ウ の否定
エ ×形容詞「ない」
答 ウ
問4 次の俳句について、後の①から③までの各問に答えなさい。
万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男
① 切れ字を書きなさい。
②この俳句の季語を抜き出し、季節を書きなさい。
③この俳句に込められた心情として適切なものを、次のアからカまでの中から二つ選び、記号で答えなさい。
ア 生まれ育った故郷への思い
イ 我が子の成長を喜ぶ親心
ウ 青春時代への懐かしさ
エ 困難を乗り越えていく勇気
オ 移ろいゆく季節の哀愁
カ 自然の生命力への感動
解説 ①切れ字は「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」を覚えておきましょう。
②季節特有のものを表している言葉を選びます。
万緑とは自然に緑が溢れかえっている様子を指すので、夏の季語です。
③書かれている内容を読み取るだけです。
答 ①や ②万緑 夏 ③イ カ
まとめ
以上、2021年度の公立高校一般過去問の解説でした。
本年度は前年度と比べ易しくなり、難しい問題がかなり少なくなった印象です。とはいえ変わらず半分以上が記述で得られる点数であり、その記述のほとんどで要約力が試されています。癖が強く、とにかく書かせる試験であることに変わりはありません。
そして易化したとはいえ全問が簡単になったわけではありません。大問1の問5や大問2の問2のような難易度の高い問題が解ければ、上位校が視野に入ってきます。