2020年度の滋賀県の国語の公立高校過去問を解説

本年度は大きく難化しました。 前年度と比べ平均点はマイナス10.9点でで47.7点で、出題傾向にも大分大きな変化がありました。

滋賀県の国語は記述の問題が非常に多く、読解問題は少し癖が強めですが、対策をすれば高得点を期待できます。

滋賀県公立高校国語過去問の傾向をまとめた記事がありますのでそちらもご覧ください。

滋賀県の公立高校 一般入試 国語の出題傾向【滋賀の国語塾】

問題は京都新聞様のサイトよりダウンロードできます。

https://www.kyoto-np.co.jp/list/corporate/high_school_exam

各問の正答率などのデータは滋賀県教育委員会様より閲覧できます。

https://www.pref.shiga.lg.jp/edu/nyuushi/high/senbatsu/105597.html

それでは公立高校入試2020年度の国語を詳しく見ていきましょう。

大問1は【本の一部】と【資料の一部】から読み取る読解問題

問1 【本の一部】の[A]の傍線部はプラスチックの特性について述べています。この特性のうち、軽量であるということによるプラスチックの利点について、【本の一部】の[A]の中ではどのように説明されていますか。具体例を含めて書きなさい。

解説 問われているのはプラスチックが軽量である事の利点にについてです。このことに留意して読み進めていくと、第4段落に詳しく述べられています。1文目と2文目を、問われている形に合うように要約しましょう。

問題文には「具体例を含めて」と書いてあります。

1文目 「温室効果ガスの排出量低減に役立ってきた。」→利点

2文目 「たとえば飲料ボトルが〜輸送時のCO2排出量が削減される。」→具体例

になります。両方を述べましょう。

2文目自体を利点と間違えてしまい、1文目に触れず部分点になる人が多かったのではないでしょうか。

正答率は13.6%と、大問1の問1としてはここ数年では異様に低いです。少し引っかけ感のある問題ですが、最初の問題だからといって簡単とは限らないということです。

答 飲料ボトル輸送時のCO2排出量が削減され、温室効果ガスの排出量低減に役立つこと。

問2 【本の一部】の【A】から読み取れることとして最も適切なものを、次のアからエまでの中から1つ選び、記号で答えなさい。

ア プラスチックを利用した生活は、地球環境への負担があまりにも大きいと言うことが最近の研究によって明らかになってきたので、早急に人間の暮らしを見直さなければならない。

イ もともと環境保護という面も持ち合わせていたプラスチックであるが、人間にとって有用な特性をもつがゆえに生じた弊害が、現在、地球環境に対する大きな問題となっている。

ウ プラスチックの歴史を振り返ると、その技術開発の中で環境保護を目的とする意外な一面もあったので、今一度初心に戻り、環境に配慮したプラスチックの開発を考えるべきだ。

エ 科学技術の進歩には、人間の意図にかかわらず、必ず功罪が現れてくるものであり、プラスチックも結果的に自然環境に悪い影響を及ぼしてしまったという経緯をたどっている。

解説 

[A]の第1段落から第4段落までで、プラスチックの環境保護に役立ってきた点について述べられていて、第5段落と第6段落で、プラスチックの環境保護に対する問題について述べられています。

答 イ

問3 【本の一部】の[A]と【資料の一部】について、【資料の一部】からのみ得られる情報はどれですか。最も適切なものを、次のアからエまでの中から1つ選び、記号で答えなさい。

ア プラスチックは分解に数百年、数千年かかるということ。

イ プラスチックが食品の保存に役立っているということ。

ウ プラスチックは人工物で最終的にごみになるということ。

エ プラスチックのリサイクルが進んでいないということ。

解説【資料の一部】の第五段落にプラスチックのリサイクルについて述べられていますが、【本の一部】には記述がありません。

答 エ

問4 【本の一部】の[B]の波線部について、本文から読み取れる理由はどのようなことですか。最も適切なものを、次のアからエまでの中から1つ選び、記号で答えなさい。

ア 再生可能な資源と再生不可能な資源の両方を使い続けるために、供給源の問題として解決策を議論すべきだから。

イ 環境問題には2つの側面があることを意識し、一側面に着目するのではなく、それぞれの面から考える必要があるから。

ウ 使用した資源の量と排出された廃棄物の量を分けて分析することで、科学的根拠に基づいた経済活動が可能になるから。

エ 環境問題においては2つの側面を同時に解決することはできないので、どちらか一方を優先することが重要だから。

解説 波線部の次の2つの段落でレジ袋を例にして述べられているように、環境問題では大きく分けて、「供給源」と「吸収源」の二側面から問題が生じることが多いと筆者は述べている。

答 イ

ここまで問2から問4まで記号問題が続きましたが、記号問題では一部分が合っていても、別の部分で本文で述べられていないことや、本文と間違っていることが書いてあればそれは不正解なので、本文を一通り読んだ上で「こんなこと書いてあったかな?」と思った解答はひとまず避けておくのが無難です。

本年度の大問1は問1と問5の難易度が高いので、記号問題は絶対に落としたくないところです。

問5 【本の一部】の[B]の二重傍線部について、「レジ袋やめよう」という動きが起こったのはなぜですか。その理由を、【本の一部】の[B]と【資料の一部】の内容を踏まえて、八十字以上、百二十字以内で書きなさい。

解説 百二十字以内と書く文字数は非常に多いです。レジ袋問題について述べられているのは、【本の一部】の最終段落と【資料の一部】の全体です。とはいえ【資料の一部】から抜き出せる重要な点の殆どは【本の一部】と同じ内容です。

【資料の一部】からは、容器包装プラスチックにどのような特徴があるのかを肉付けした上で、レジ袋は容器包装プラスチックの一部として扱われていることを書きます。(第1段落から第3段落の内容)

続いてどちらにも共通して書かれている、レジ袋が吸収されずに溜まり続けている事について詳しく記述します。

資料にも本にも同じような内容が書かれているので、頭の中で整理して、適切な文章の形にしましょう。

14点もあり、読み取る部分こそ多いものの特に引っかけはないので、しっかりとした日本語になっていて上記の2点のいずれかを抑えていれば部分点はもらえるはずです。

答 レジ袋は、現在、大量に生産され、大量のゴミとなっている容器包装プラスチックの一つである。そうした中で、地球を廃棄物の吸収源と考えると、吸収できない人工物であるレジ袋が、自然の中に流出し、分解されずにたまり続けることが問題となっているから。

大問1の正答率は問1が13.6%、問5が6.6%と、記述がかなり難しい印象です。問1は利点と具体例を見分けることができるか、問5は百二十字以内という多い量の中でどのようにして二つの文章から読み取って組み合わせるかがポイントになります。今まで大問1は大問2と比べどちらかといえば簡単な傾向がありましたが、大分難化しました。

大問2 【本の一部】【敬語についての調査】【意見文の下書き】【話し合っている様子】から読み取る読解問題

読み取る文章が多い大問のように思えますが、各問にどの文章から読み取ればよいかはっきり書いてあるので、各問の指示に従いましょう。

問1【本の一部】の(  )に当てはまるように、適切な謙譲語を一語で書きなさい。

解説 【本の一部】の(  )の後ろ2行を見ると、「行く」の謙譲語を書けばよいことがわかります。

ここ数年は敬語の問題は出ていなかったために対策していなかった受験生が多かったのか、正答率は26.1%とかなり低いです。

尊敬語→相手を敬う

謙譲語→自分がへりくだる

丁寧語→です。ます。

という基本を抑えておけば難しい問題ではありません。

答 参り

問2 【本の一部】の傍線部について、筆者はどのように言い換えていますか。【本の一部】から25字以内で抜き出して書きなさい。

解説 引用されている井上氏の主張と筆者の主張は同様であることが傍線部の直後に述べられいています。2行後に解答があります。「人称」=「主語」であることが分かれば気づきやすいでしょう。

解答 敬語を使用することによって、主語を明確にしている

問3  ひなたさんは、交流した後、【意見文の下書き】の第④段落を書き直すことにしました。次の条件1と条件2にしたがって書きなさい。

条件1 第④段落の一文目に続けて書き、第⑤段落につながるように書くこと。

条件2 【敬語についての調査】の内容を引用し、その内容についてどう考えるかを含めて、八十字以上、百字以内で書くこと。

解説 まず書く内容は条件2と【話し合っている様子】のなつきさんの2回目の発言より、【敬語についての調査】の結果を使って自分でまとめなければいけません。その上で条件1より、前後と会う文脈にしなければなりません。直後の第⑤段落では「その場にふさわしい敬語を使っていきたい」と肯定的表現で締められているので、これに合うように書いていきます。

【敬語についての調査】の上の調査「敬語の使用によるマイナスの影響を感じるか」より、73.9%の人がマイナスに感じていません。ここを引用しましょう。

この問は抑えるポイントが上記のように多く、調査からの引用も一部分にしなければならないので、満点を取ることはかなり難しい部類に入るのではないでしょうか。

答 (では、敬語を使わなくても良いのだろうか。)同じ調査では、そもそも七割台前半の人が、敬語を使うことが人間関係を作っていくのに、マイナスではないと回答している。このことは、社会生活の中で多くの人が敬語の必要性を感じていることの表れだと考える。

問4 ひなたさんの学級では、この後の学習で、意見文の書き方についてまとめることになりました。あなたがまとめるとしたら、どのように書きますか。次の条件1から条件3にしたがって書きなさい。

条件1 第一段落には、【意見文の下書き】の構成や【話し合っている様子】の内容踏まえ、意見文を書くときの工夫点を三つ取り上げること。

条件2   第二段落には、工夫点として三つのことを取り上げた理由を書くこと。

条件3   原稿用紙の正しい使い方にしたがい、百字以上、百四十字以内で書くこと。

解説 第②段落に自分が生活の中で経験したこと

第③段落で【敬語についての調査】の結果を引用していること

これらは【話し合っている様子】で詳しく触れられているので絶対に書きましょう。

後は、【意見文の下書き】で用いられている表現から何かを取り上げましょう。第④段落冒頭の読者への問いかけや、第⑤段落で主張の補強がなされていることなど、理由さえ書ければどこでも問題ありません。

大問2は新傾向として問3で百字以内の記述が登場し、この大問の最終問題(例年であれば問5 本年度は問4)の記述の方式も大きく変わりました。またその分1問少なくなりました。

問3は前後の文脈にあった主張を資料から読み取る問題、問4は資料に書いてあることから工夫点を書く問題と、今まであった「あなたの考えを述べなさい」という受験生の意見や感想を述べるタイプの設問がなくなりました。完全に文章から読み取るだけになったので、より読解力が必要とされている年度であるといえます。

大問3は漢字の読み書き、活用、古典の問題

問1 次の①から⑤までの文中の傍線部のカタカナを漢字に直して書きなさい。

シュウイを見渡す。

② 気力をフルう。

シャソウから外を見る。

④ 年月をツイやす。

メンミツな計画を立てる。

答 ①周囲 ②奮 ③車窓 ④ 費 ⑤綿密

問2 次の①から⑤までの文中の傍線部の漢字の正しい読みをひらがなで書きなさい。

① 書類を申請する。

② 商品を陳列する。

③ 歓迎会をす。

④ 注意を喚起する。

⑤ 現地にく。

答 ①しんせい ②ちんれつ ③もよお ④かんき ⑤おもむ

問3 次の文中の傍線部の活用の種類と活用形は何ですか。活用の種類は、次の①のアからオまでの中から1つ選び、記号で答えなさい。活用形は、後の②のaからfまでの中から1つ選び、記号で答えなさい。

「ありがとう、友よ。」2人同時に言ひ、ひしと抱き合い、それからうれし泣きにおいおい声を放って泣いた。          (太宰治『走れメロス』による。)

① 活用の種類 

ア 五段活用

イ 上一段活用

ウ 下一段活用

エ カ行変格活用

オ サ行変格活用

② 活用系

a 未然形

b連用形

c終止形

d連体形

e仮定形

f命令形

答 ①ア ② b

問4 次は中国の『韓非子』という本にある話の【A】と、その現代語訳【B】です。これらを読んで、次の①と②の各問に答えなさい。

【A】

  楚人に、盾と矛とをひさぐ者あり。これをほめていはく、「わが盾の堅きこと、よくとほすものなし。」と。またその矛をほめていはく、我が矛の利きこと、物においてとほさざるなし。」と。ある人曰く、「子の矛をもつて、子の盾をとほさばいかん。」と。その人、こたふることあたはざりき。
(竹内 照夫『新釈漢文体系 第12巻 韓非子(下)』による。)

【B】

  楚の国の人で、盾と矛とを売る者がいた。その盾を自慢して言うには、「私の盾の堅いことといったら、突き通せるものはないのだ。」と。また、その矛を自慢して言うには、「私の矛の鋭いことといったら、どんなものでも突き通さないものはないのだ。」と。ある人が、「あなたの矛であなたの盾を突いたら、どうなるのか。」と尋ねた。その人は答えることができなかった。

① 【A】の傍線部は、【B】のどの部分と対応していますか。適切な部分を【B】の中から抜き出して書きなさい。

② 【A】の話から生まれた故事成語を漢字で答え、意味を書きなさい。

答 ①突き通さないものはないのだ

  ②矛盾 前後のつじつまが合わないこと。

まとめ

以上、2020年度の公立高校の国語でした。

本年度以前の2年間は平均点が50後半から60点ほどの高い状態が続いており、五教科のうち最も平均点が高い科目になっていたので、難化自体は予想できました。

難化の理由として、大問2で述べたように同大問の記述で問われる内容が大きく変わったことや、大問2の問1の敬語の問題や、大問3の問3の活用の問題など、今までになかったような覚えていないと書けない問題が出ていたことが挙げられます。